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乗遅れ体験記

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このページのもくじ

  1. はじめに
  2. いきさつと、プランの概要
  3. 飛行機の遅延
  4. 乗り継ぎ失敗!
  5. 空港でのやり取り
  6. その後
  7. 失敗の教訓
 

はじめに

 日本にいたころ、飛行機に乗り遅れたり、乗継ぎに失敗したりしたことなんてありませんでした。仕事の都合でギリギリに滑り込んで空港の職員と一緒にダッシュしたことはありましたが、最後は何とかなっていました。でも、ヨーロッパでは、そうはいきませんでした。

 私が海外旅行での乗継ぎに余裕を持つことをお勧めしているのは、理屈の上でそうだというだけではなくて、この体験があるからです。乗り遅れてみてからどんなに交渉してみても、目的地にたどり着けなけないことに違いはなく、それでは意味がありません。実際に失敗してみて、そのリスクの大きさを思い知りました。

いきさつと、プランの概要

 当時、私はロンドンに住んでいました。

 ある連休の週末にあわせて、少し休みを追加して旅行をしようと思ったのが、事の発端でした。イギリスの天候に気が滅入り気味だったこともあって、南仏と南ドイツに興味が向かいました。イギリスの海にはない青く透き通った海を感じたい、というところからニースが、澄んだ空の下を歩いてみたい、というところから南ドイツが、それぞれ候補になりました。

 南仏と南ドイツ、2回に分けてロンドンから往復すれば、何の問題もないところでした。でも、連休はその週末しかないし(イギリスは日本と比べると祝日が少ないのです)、イギリスの面倒な入国審査を2回も受けるのは億劫でした。そこで、連休の週末に少し休みを追加して、南仏と南ドイツを両方行けたらいいな、なんて横着なことを考えました。思えばこれが、失敗の始まりだったのです。

 ロンドン発で、南仏と南ドイツの両方に行く…距離だけなら、それほど無茶な話ではありません。けれど、実際に航空券を手配して旅程を組むとなると、色々厄介でした。まず、ヨーロッパの国際線航空券は、往復はかなり安いものの、3点経由でしかも3点が全て別の国というパターンではかなり高額になってしまうのが普通でした。格安航空会社なら片道から相当安い航空券が買えるのですが、残念ながらフライトの時間が早すぎたり遅すぎたりして、連休+αの旅行に組み込むことはできませんでした。

 そこで、ロンドン⇔ニースの往復航空券と、ニース⇔南ドイツの往復航空券を別々に手配し、費用を抑えることにしました。ニース空港は巨大国際空港というわけではなく、別会社とはいえ同じターミナルに発着する便だったので、オンラインチェックインをして搭乗券を事前に準備した上で、荷物を預けなければ100分で何とかなるだろうと思っていたのでした。

飛行機の遅延

 出発当日、空港に行って、特に問題なくチェックインを済ませました。その時点では、遅れ情報などは特にありませんでした。出発時刻の30分前には出発ゲートもオープンしました。ところが、一向に搭乗が始まりません。そして、「飛行機の機体に技術的な問題が発生したため、乗客の飛行機への案内が30分程度遅れる」という内容のアナウンスが流れてきました。

 ニースで飛行機を乗り継ぐ乗客などほとんどいないので、周囲の乗客の反応は落ち着いたものでした。私も30〜40分程度の遅れなら全く問題ないため、まぁ大丈夫かと鷹揚に構えていました。ところが、出発予定時刻から30分経っても、全く動きがありません。さすがにまずいのではないかと思い、ゲートにいた職員に、100分の乗継時間で乗継ぎを予定していること、60分以上到着遅れると乗継ぎが危ういことを説明し、何時頃に到着しそうなのかを聞きました。職員は端末を叩き、予定飛行時間などを表示させて、到着は30分遅れ程度の見込みだから大丈夫だ(乗継ぎに70分確保できる)、というものでした。その画面をのぞき込んで、大丈夫かと思って待合に戻りました。

 10分ほど待ったところで搭乗開始のアナウンスがあり、10分で搭乗すれば50分は余裕がありそうだと皮算用しました。ところが、乗客全員が搭乗しても飛行機は一向に動き出しません。飛行機の前の方では、操縦室の扉のところで技術職と思しきスタッフが話をしており、全然出発モードにならないのです。そうこうしているうちに10分、20分と時間が過ぎていきました。

 これはさすがにまずいのではないかと思い、キャビンアテンドに、100分の予定で乗継ぎがあること、既に60分遅れていて余裕時間が40分を切っていること、地上職員からは大丈夫だと言われたが心配であることを説明した上で、どうすべきか相談しました。キャビンアテンドは操縦室に電話で確認した上で、乗継時間は40分程度確保できる見通しであり、ニースの地上職員に連絡し善処する、というものでした。

 この時点で、私の頭の中には乗継ぎは駄目かもしれないなと、半ば覚悟を決めつつありました。地上職員に質問した際に端末で見た予想飛行時間を考えると、全てが上手く行って40分確保できるかどうか、というところだと思ったからです。機内では、間に合わなかった場合にどうするかということを考え、代替プランをほぼ組んでいました。

乗継ぎ失敗

 実際に飛行機がニース空港に着陸し、スポットに入ったのは定刻から70分遅れでした。この時点で、乗継ぎ時間は30分しかありません。しかも、飛行機が入ったスポットはバスで到着ゲートまで行くスポットでした。キャビンアテンドは気を利かせて着陸前に前方の座席に移動させてくれたのですが、これでは、どんなに早く飛行機から出ても意味がありません。

 飛行機を降りる時、キャビンアテンドは、タラップの下にいる地上職員を指さして、事情は無線で説明してあるので彼に事情が伝わっているはずであると言いました。しかし、実際にタラップを降りてみると、その職員は私の事情など全く把握しておらず、改めて事情を説明しても一般的な説明をしてくれただけでした。ヨーロッパの交通機関というのはそんなもんなので、やっぱりねと思ったぐらいでしたが、フランス語でこの面倒な状況を説明する語学力があるわけでもなかったので、この時点でもう無理だろうなと観念しました。

 それでも最後の望みをかけて、バスが到着口に着くと同時に真っ先にバスから飛び出し、1番で入国審査ゲートをくぐりました。フランスの入国審査はイギリスほど厳しくないので、すぐにスタンプをもらい、セキュリティチェックを抜けて出発ゲートに駆け込みました。時刻は出発時間ジャスト。私が乗る予定だった飛行機はまさに扉を閉め、ブリッジが機体から離れるところでした。息を切らしながら、機体から離れていくブリッジを眺めたのでした。
 

空港でのやり取り

 ゲートの職員は、「遅すぎるよ」と言いながら、それでも飛行機に連絡をとってくれました。しかし、ドアを閉めて出発準備が終わった後で、結局その飛行機に乗ることはできませんでした。息を切らしながら、飛行機が70分も遅れて大急ぎで走ってきた、私が悪いんじゃない、と説明すると、もと乗ってきた会社に事情を説明すべきだから案内する、と言われました。私は正直、見込みの薄い話だなと思いましたが、とにかくセキュリティエリアから出ないとどうにもならないので、この職員についていくことにしました。

 職員に連れられて、乗ってきた航空会社のカウンターに行き、英語の分かる職員に事情を説明したところ、ニースまでの航空券とニースからの航空券が別手配であり、契約が別なのでこのカウンターでは何ともならない、乗り遅れた会社のカウンターに行こうと、再びたらい回しになりました。しかし、乗り遅れた会社には何の落ち度もありません。それに、ニースから私が行く予定だった目的地への便はもうないので、どうやってもその日のうちに目的地にたどり着くことはできません。といって、翌日の昼間の便に振り替えても、観光をする時間はほとんど確保できません。交渉をするだけ無駄です。

 というわけで、もとのカウンターに戻ったのですが、こちらはこちらで、飛行機に遅延補償はないのだという契約条項を説明される始末です。とはいえ、契約上は航空券の乗り継ぎが保証されないのはこの職員の言うとおりで、この程度の遅れでは補償が出ないことは知ってました。ヨーロッパの飛行機というのは高速バスと同等の単なる移動手段に過ぎないので、腹は立ちましたが仕方ありません。

 私に残された選択肢は、せめて帰りの航空券を変更してすぐにロンドンに帰らせてくれと主張して交渉するか、ニースで少し長く滞在するかの2択になりました。ただ、せっかくここまで来たのにロンドンに帰ったら何をしにきたのか意味が分かりません。それに、ニースに日帰りというのは普通ではないので、イギリスの入管でネチネチ事情を聞かれそうです。入国審査でそんな事情を説明するのは気が滅入ります。それに、飛行機の窓から見た地中海の景色はやはり素晴らしいものだったので、せめてニースだけは楽しんで帰りたいという気持ちもありました。

 結局、ニースでの滞在を延ばすことにしました。

その後

 このトラブルの結果、ドイツ行きは中止となり、ニースでの滞在期間が増えました。不幸中の幸いだったのは乗継地がニースだったということで、周辺地域への遠足を含めて、南仏を満喫するプランに切り替えることができました。

 そのため大筋ではうまくいったのですが、1つ誤算だったのが服装でした。ドイツに数日滞在することを前提に服や靴を準備していっていたので、南仏の暖かい気候に対応した服装の準備が十分でなく、やや苦労しました。もっともこれは、旅の思い出という程度のもので、大過はありませんでした。

 そして、いつか絶対、またドイツに行くという強い決意を抱いたのでした。

失敗の教訓

 実際に自分で失敗してみて、飛行機の乗継ぎというのはリスクが高いのだということがよく分かりました。このとき利用した航空会社は格安航空会社ではない普通の航空会社だったのですが、それでも乗り継ぎに失敗して計画が大幅に狂ってしまったわけです。

 そして、2つの教訓を得ました。

 1つは、外せない乗継ぎ(特に日本への帰国など)は、慎重の上にも慎重を期す必要があるということです。今回の私のように別々に手配した航空券で当日の乗継ぎを計画するのは論外です。そのような場合は、せめて経由地で一泊する行程にしたいものです。さらに、一続きの航空券で当日乗継ぎをする場合でも、ぴったり接続する便は避け、その1本前の便で接続便を確保すると、より安心です。何かトラブルがあっても、1本後の便に振り替えてもらうことで、乗継便に乗れる可能性が高まります。

 もう1つは、同行者がいる場合は乗継ぎに特別に注意が必要だということです。今回は1人旅だったので、何があっても自分1人の問題で過ぎましたし、プラン変更も旅の醍醐味ということで、前向きに考えることができました。でも、もし同行者がいたら、そうはいきません。私は乗継ぎで全力ダッシュするぐらい苦ではないですが、そういうのがダメな人もいます。こうした1つ1つの感覚のズレが不満につながり、せっかくの旅行が台無しになってしまうこともあり得ます。同行者がいる旅行は、堅いプランを立てるべきだと改めて思ったのでした。

 
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初版作成:2012年06月 
最終更新:2017年07月