イギリスは鉄道発祥の国で、狭い国土に鉄道路線が張り巡らされています。歴史が古いだけに老朽化している部分もありますが、日本で言われているほど悲惨な遅れに直面することは少ないので,よほど運が悪くない限りそんなにひどいことにはならないと思います。
イギリスの鉄道の問題点の1つが、運賃の高さです。特に普通片道運賃の高さは洒落になりません。その分割引が充実していて、往復の運賃が片道+1ポンド程度だったり、特定の時間帯や特定の便に限って大幅な割引きになる割引切符があったりします。このぐらいならまだ良いのですが、中には特定の経路の便のみに適用される割引きとか、同じ経路を走る複数の鉄道会社のうち特定の鉄道会社の運行する列車限定の運賃とかといったものまであります。この辺になると事前にきちんと調べていかないと、目の前にいる列車に乗れるのかどうかも分からない、ということになりかねません。
細かいシステムを説明するとキリがないのですが、よく見かける切符の種別だけでも結構たくさんあります。
Anytime Single:
2日(翌々日午前4時29分まで)有効の片道普通運賃。途中下車可。利用時間の制限はない。
Anytime Day Single:
1日(翌日午前4時29分まで)有効の片道普通運賃。途中下車可。利用時間の制限はない。
Anytime Day Return:
1日(翌日午前4時29分まで)有効の往復運賃。途中下車可。利用時間の制限はない。
Anytime Return:
1か月有効の往復運賃。往路は最初の5日の間に使う必要がある。途中下車可。利用時間の制限はない。
Offpeak Single / Super Offpeak Single:
特定の曜日や時間帯に有効な片道運賃。1日(翌日午前4時29分まで)有効。ルートの制限や途中下車の可否はチケットの条件による。
Offpeak Return / Super Offpeak Return:
特定の曜日や時間帯に有効な往復運賃。1日(翌日午前4時29分まで)有効。ルートの制限や途中下車の可否はチケットの条件による。
Offpeak系の運賃は乗車できる時間帯や経路などの条件をきちんと確認する必要があるので、事前にウェブで調べてオンライン購入するのがよいと思います。
イギリスの鉄道(National Rail)は地域や方面ごとにかなりの数の会社に分割民営化されたため、運行会社ごとにサイトがあります。ですが、どの会社のサイトでも基本的に全ての路線の切符を買うことができます(ただし、自社運航便限定のウェブ割引運賃を設定している会社もあり、そうした運賃はその運行会社のサイトでしか買うことができません)。
どの運行会社のサイトでも購入できるとはいっても、サイトによって使いやすさは大分違います。私がよく使っていたのは,
イーストコースト(外部サイト)のページでした。各種運賃の表示が比較的分かりやすかったからです。他に,National Railの本部(?)のサイトも使ったことがあります。
さて、イギリスの鉄道切符は日本と同じようなカードサイズの磁気券なので、オンラインで購入しても必ず現地で受け取る必要があります。受取り自体は自動販売機を使って簡単に受け取れます。タッチパネル式の自販機の初期画面で「Collect」を選んで、あとは画面の指示に従うだけです。ただ、いくつか注意点があります。
まず、オンライン購入時にチケットを受け取る駅を指定する画面が出ることがあるので、その場合は実際に受け取る駅を指定します。他の駅で受け取れるかどうか試したことはないのですが、旅行中に事前に駅に寄る予定がないなら、乗車駅を指定しておくとよいでしょう。
次に、切符の受取りの際には決済に使ったクレジットカードと、決済画面に表示された受取番号(Reference code)が必要になります。決済に使うクレジットカードは、ICチップ付きのものにしておいた方が無難です(機械が受け付けてくれない場合は窓口に行かなければいけなくなることもあります)。また、決済画面はできれば印刷して、忘れずに持っていきましょう。
大抵のイギリスの鉄道の駅には、「Fast Ticket」と書かれたタッチパネル式の自動販売機があります。操作方法はそれほど難しくありませんが、駅名を入力する必要がある場合があるので、出発駅と到着駅のスペルを控えておくとよりスムーズだと思います。
自販機は窓口に比べると混雑していないのでお勧めですが、自販機によっては当日券と翌日券しか買えないものもあるので、その点が少し不便です(オンラインなら数か月先のチケットも買えますし、オンラインで予約したチケットはどの機械で受け取れます)。
自販機でチケットを購入する場合も、支払いの手段は基本的にICチップ付きのクレジットカード限定です。決済には暗証番号が必要なので、カードの暗証番号を確認していきましょう。
一番基本的な方法のはずなのですが、イギリスの鉄道切符は割引きの種類が多く、それを口頭で説明されることもあるので、窓口で切符を買うのはちょっと大変な場合もあります(自販機なら、画面に切符の種類が表示されます)。
ただ、単純な経路の片道や往復なら、時間帯が混雑時間帯かオフピークかぐらいを伝えれば何とかなります。自信がないときは、紙に出発地・到着地・乗車予定時間を書いて差し出すとよいでしょう。
イギリスの鉄道駅は、都市部の駅には自動改札があるなど、日本と結構似ています。切符もカードサイズの磁気券です(そのため、オンラインで購入してもセルフプリントはできず、現地で受け取る必要があります)。また、フランス国鉄などとは違って刻印という概念はないので、電車に乗る前に刻印機を探し回る必要もありません。とても楽です。
ただし、イギリスの自動改札は日本とは違って、挿入した切符が20センチぐらい先の受け取り口からすぐに出てきます。そして、出てきた切符を取らないとゲートが開きません。時々ここで引っかかっている人がいるので、切符を入れたらすぐ取る、ということだけは覚えておきましょう。
あとは、乗る列車がいるホームに行って乗車するだけです。ただ、日本と違ってドアを自分で開けるタイプの列車も多いです。開け方は、ドアの開閉ボタンを押すタイプの車両と、自分でドアノブを回して物理的にドアを開けるタイプの2種類があります。
自分でドアノブを回すタイプの車両は、降りるときも注意が必要です。このタイプのドアは、駅に到着した時も自動では開きません。ドアを開けるには、ドアの窓を開けて、そこから手を外に出してドアノブを回すという、今時の日本ではあり得ないような作業が必要です。誰かの後ろについて降りるならよいのですが、運悪く他に誰も降りる人がいないときは、こういう操作をするのだと知らないと結構戸惑いそうです。
イギリスの鉄道には、指定席車両はありません。しかし、長距離列車は座席指定が可能な列車もあります。車両に乗って、座席の背もたれに紙が刺さっていたり、窓の上の液晶ディスプレイに予約区間が表示されていたりする座席は、予約されています。ただ、予約したのに乗らない人も多いので、表示区間でも人がいなければ座ってしまってOKです。
地方の駅ではそうでもないのですが、都市部の特にターミナル駅は、電車が発車するホームがなかなか案内されないことがあります。ホームの混雑を緩和するためにこのような方法を採用しているようなのですが、乗客の立場からは結構微妙です。というのは、ホームが表示された瞬間に大勢の乗客が自動改札に殺到し、座席の争奪戦が始まることもあるためです。
座席を予約していない場合や、座席予約ができない近郊列車の場合は、駅の掲示板に常に注意して、ホームが表示されたらすぐに改札に向かうとよいでしょう。私自身、コーヒースタンドでコーヒーを買っている間にホームが表示されてしまい、座席を確保しそびれたことがあります。路線や時間帯にもよりますが、座席の争奪戦は結構熾烈なこともあります。
イギリスの鉄道は遅れる、というイメージがあります。このイメージはそんなに間違っているわけでもなく、毎週のように信号故障でどこそこの鉄道が大幅に遅れた、なんていうニュースを耳にすることもあります。ただ、実際に自分が使うときにそういう大幅な遅れに当たる確率が高いのかといえば、そうでもないような気がします。イギリス国内は結構動き回りましたが、30分以上の大幅な遅れに見舞われたことはほとんどありません。
日本のように精度が高いわけではないですが、飛行機だってバスだって、遅れるときは遅れます。それを考えるとそれほど目くじらを立てるほど酷いわけでもないのではないかと思います。・・・なんていう発想になってしまう時点で既にイギリスに毒されているような気もしますが、そこまで神経質になることもないというのが正直なところです。
イギリスの駅や車内アナウンスなどでよく見かける表現を集めてみました。
calling at ○○、××・・・ |
停車駅は○○、××・・・ |
CCTV |
監視カメラ |
coach |
車両 |
Mind the closing doors |
閉まるドアに注意 |
Mind the gap |
電車とホームの隙間に注意 |
Mind the step |
段差に注意 |
signal failure |
信号故障 |
Stand back from the platform edge |
ホームの内側に下がってください |
Stand clear of the doors |
ドアから離れてください |
top up |
カード残額の積み増し |
track |
番線 |
We are now approaching to ○○ |
間もなく○○駅です。 |